金魚花火

P9250220 2016-09-25 12-42-039 


   父の毎年恒例、工業学校の同窓会がこの季節にある。
   参加は今年を限りと決めたらしく、親しくしてくださった方々にその挨拶を、と
   私鉄と地下鉄を乗り継ぎ、母親の心配をよそに夕方から出掛けた。
   まだ暑さに慣れ切っていない7月初旬、地下鉄の階段、
   母親の心配も無理はない。
   会の最後に求められた挨拶は、
   父曰く、もう少し気の利いたことを話せたらよかったということだったが、
   よい会を締めくくれたようだった。
   帰りは連れの方がいらして、地下鉄まで歩くはめになった。
   ようようの体で最寄りの駅にたどり着いたが、あいにくタクシーは出払っていて、
   戻ってくる気配はない。
   土曜の夜で弟も一杯始まっていた。
   へとへとになりながらも意を決して歩き進めた
   暗い道、父がその先に目にしたのは、
   懐中電灯を手に一生懸命歩いてくる母親の真っ白な頭だった、という。
   いまどき懐中電灯? 次の日母親にきいてみると、
   弟夫婦が玄関で見送り、お嫁さんが持たせてくれたらしい。
   家にたどり着くなり、母に急かされたのだろう、
   私に無事帰還の報告をくれた父は電話の向こうで
   母への、周りのすべてへの、ありがとう、を繰り返した。

   共に90路の、ただただ真っすぐでどこまでも平らな道を
   ゆっくりとそれでも時々息を切らし、
   特に話をするでもなくそれでもふたりで歩いている。
   
   「 お母さんと思いがけない夜の散歩ができてよかったね!」
   私は嬉しくなって言った。





     






スポンサーサイト

コメント

非公開コメント